国旗
今日一国家を形成する国々にして、国旗の制定せられざる所なし。国旗は実に国家を代表する標識にして、其の徽章色彩(きしょしきさい)にはそれぞれ深き意義あり。今我が国を始め主たる諸外国の国旗に就いて述べる。
雪白の地に紅の日の丸を掲げる我が国の国旗は、最もよく我が国体にかない、皇威の発揚、国運の隆昌さながら旭日昇天の勢あるを思はしむ。更に思えば、白地は我が国民の純正潔白なる性質を示し、日の丸は熱烈燃ゆるが如き愛国の至誠を表すものともいふべきか。
イギリスの国旗は、今日の形式を具ふるまでに幾多の變化を重ねたるものなり。元来イギリスは、イングランド・スコットランド・アイルランド三国の合同して成れる国家にして、先ずイングランドとスコットランドと合するや、白地に赤十字の徽章ある前者の国旗と、藍地に斜白十字の徽章ある後者の国旗とを合して一旗となし、更にアイルランドの加わるに及び、白地に斜赤十字の徽章ある其の国旗を合わせて、遂に今日の如き形式をなすに至れり。
アメリカ合衆国の国旗は一定不變の部分と、變化を許されたる部分とより成る。即ち赤白合わせて十三條の横筋は、独立当時の十三州を表すものにして、永久に變化することあらわれども、藍地中の星章は、常に州の数と一致せしむるを定めとす。現今は星章の数四十八個なり。
藍、白、赤三色を以て縦に染分けられたるは、フランスの国旗なり。此の三色は、自由・平等・博愛を表すものなり。
赤地の中央白円の中に黒のかぎ十字を畫がけるものはドイツの国旗にして、かぎ十字は太陽の光をかたどりたるものなりという。
中華民国の国旗は赤地の上方一隅を青にし、その中央に十二の光芒ある白日の形を染抜きたるものなり。此の赤・青・白の三色も自由・平等・博愛の意を表せるものなりという。
イタリアの国旗は、緑・白・赤の三色を縦に染分け、中央の白地中に王家の紋章を表せり。これイタリア中興の主エンマヌエル王、国土統一の時、其の家の紋章の色なる白と赤とに、統一の成功を祈る希望の色として緑を加え、更に王家の紋章を配したるものなり。
かくの如く各国の国旗は、或いは其の建国の歴史を暗示し、或いは其の国民の理想・信仰を表すものなれば、国民のこれに対する尊敬は、即ち其の国家に対する忠愛の情の発露なり。故に我等は、自国の国旗を尊重すると同時に、諸外国の国旗に対しても、常に敬意を表さなければならない。
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